フィナステリドは前立腺肥大症の薬

フィナステリドについて説明する男性「お医者さんに相談だ」というテレビコマーシャルでも盛んに宣伝されているように、医療機関でも薄毛治療が行われるようになっています。
これは、2005年に「プロペシア」が厚生労働省に承認されて以降に本格的となった流れで、この内服薬の処方が治療の中心です。
ちなみに、厚生労働省が承認する際に1年間かけて実施した臨床試験によると、被験者の58パーセントに軽度改善以上、98パーセントに不変以上の効果が確認されています。
なお、このように薄毛に顕著な効果を期待できるプロペシアは、アメリカで開発されたフィナステリドの5mg錠です。
このフィナステリドは、アメリカ大陸に自生している「ノコギリヤシ」という天然ハーブをモデルにして開発された抗アンドロゲン薬で、前立腺肥大症を抑制することを目的としています。

その具体的な作用機序は、II型5α-reductaseという前立腺に存在している還元酵素の活性を阻害するという内容です。
この還元酵素は、男性ホルモンのテストステロンを変換することにより、DHTという物質が生産されます。
このDHTは、テストステロンよりも活性度が高いのが特徴で、前立腺をコントロールしていると考えられています。
つまり、テストステロンの分泌量が低下するに伴い、DHTの影響力は大きくなるので、前立腺に対してのコントロールも強力なものになります。
これにより、肥大が発生するのが中高年以降に前立腺肥大症の発症頻度が高くなる仕組みです。

この前立腺肥大症の抑制を目的として開発されたフィナステリドは、1992年にアメリカで治療薬として認可され、プロスカーという商品名で5mg錠として販売されます。
その後、身体への影響を配慮して1mg錠での研究が進められた結果、AGAにおいて頭髪の成長が確認されます。

これにより、誕生したのがフィナステリド1mg錠のAGA治療薬プロペシアで、日本を含め世界60ヵ国以上で販売されています。
ちなみに、日本ではフィナステリドは前立腺肥大症の治療薬としては承認されていないので、5mg錠のプロスカーに関しては、処方されていません。

副作用として糖尿病や脳卒中のリスクが増大する可能性

飲む育毛剤として知られているプロペシアは、フィナステリドの成分量が5mgから1mgに変更されていますが、前立腺肥大症の治療薬プロスカーと作用機序は同じです。
このために、薄毛の進行を抑制する目的で服用した場合でも、前立腺に影響が及ぶ可能性があります。
つまり、副作用が発生するリスクがあるということです。

厚生労働省がプロペシアの副作用として報告しているのは、勃起不全、射精障害、精子量の減少などの性機能に関するものです。
これは、承認する際に実施した臨床試験の結果を踏まえたものです。
一方、アメリカの医療機関では新たに2年間かけた治験により、II型糖尿病や血管疾患、骨粗鬆症のリスクも増加する可能性があると発表しており、さらに医薬品医療機器総合機構へは脳卒中や心筋梗塞、脳静脈洞血栓症が発症したケースも報告されています。

なお、このようにプロペシアにより副作用が発生するのは、活性を阻害するII型5α-reductaseが神経機能に大きな役割を担っていることと、これを抑制することで生産量が減少するDHTは男性ホルモンのインスリン成長因子を減少するという作用を発揮するためです。
これにより、前者の作用により脳卒中のリスクが高まり、後者が原因で糖尿病の発症頻度が高くなります。
さらに、国内の研究者からは鬱病の発症や記憶力の低下などの可能性も指摘されています。

このように、様々な副作用のリスクが増大する可能性があることから、アメリカでは「post finasteride syndrome」として問題視されています。
プロペシアは、プロスカーよりも成分量を少なくしていますが、これにより安全性が高まったとまでは言えないようです。
このために、服用する際にはリスクを認識したうえで医師の指導の下に行うのが適切です。